JR広島駅に、ハート型のタングラムのレリーフ【図1】があります。
基本のハート型を10個に分割したピースを並び替えて、様々な形を作り出した作品です。これは、デザイナーの福田繁雄さんの作品だそうです。
タングラムとは、正方形を分割してできた7つの図形を組み合わせることで、示されたシルエットを作るパズルです。一般的には【図2 左】がよく知られていますが、そのほかにもストマキオン、デビルパズル(基本形が長方形)などがあります。清少納言知恵の板【図2 右】は江戸時代に考案されたものだそうです。
JR広島駅では、ハートのタングラムを並び替えて作られた、57パターンものハトが、駅前の地下道を飛び回っています。【図3】
私はこれをパズルにして遊びたいと思い、市販のものを探したのですが、見つけることができませんでした。それなら、自分で作るしかないなと思ったのが10年ほど前です。なかなか進まなかったのですが、最近やっとできあがったので、その紆余曲折を書き記そうと思います。
まず、デザインです。シンプルな形ですので、定規とコンパスでも作成可能ですが、何かソフトウェアを使いたいと思いまして、数学の関数ソフトを用いてすべての曲線と直線を式で書いてみることにしました。
例えば【図4】
の赤色の曲線は、といった具合です。
この形の通り、適当な大きさの板を切ればできあがりなのですが、電気ノコギリなどを使ったとしても、正確にこれらの形を切り出すことなど私には難しい。だいいち電気ノコギリを持っていない。何かいい方法はないかと思案していたところ、近所のGoodayに、レーザーカッターでオリジナルの作品を作ることができるコーナーを見つけました。担当のお姉さんに相談してみると、作品のデザインをデータで持ってきたら適当な板をカットしてくれるとのことです。(少し値は張るのですが)。svg形式のファイルがよいとのことでしたが、Adobe Illustratorは持っていません。フリーソフトのInkscapeで作れそうだとわかり、早速ダウンロードし、見よう見まねで、svgファイルを作ってみました。Goodayのレーザーカッターは素晴らしいです!思った通りの10ピースを切り出すことができました。【図5】
パズルの素材はGoodayの担当の方に勧めてもらった赤松です。カットしてもらった後で分かったことですが、高熱でカットするらしく、赤松が松脂でべたべたになってしまいました。パズル中に手が汚れるのも嫌なので、ウェットティッシュで丁寧に拭き上げました。
さて、ハートのタングラム10ピースはできあがりましたが、パズルとして遊ぶためには、問題を作成する必要があります。JR広島駅にあるレリーフはいわば<解答>なのです。<問題>は影絵のようなもので、それぞれのピースが、完成図のどの部分に使われているのかがわかってはいけません。つまり、【図6】の左が<問題>で右が<解答>です。
問題作成にはPowerPointの図形描画機能を利用しました。まず、10個のピースをバラバラに作ります。これらをひっくり返したり回転させたりして並べればよいわけです。ハトをひとつ作ってみて、この作業は結構面倒くさいということがわかりました。【図1】のレリーフにはハトが25匹います。少なくともこれくらいは、つまり25問くらいの問題量がないとパズルとして格好がつきません。あまりの作業量の多さに、モチベーションが下がっておりました。
そんなときに、久しぶりに広島在住の小学4年生M君に出会いました。彼は算数大好き少年で、T字型のパズルを1日もかからずに全問解いてしまうほどです。M君ならこのパズルを楽しんでくれるかもしれないと、私のモチベーションも俄然上がってきました。
10個の図形ピースを回したりひっくり返したりして、やっと25種類のハトを作りました。パワポのスライドをpngファイルに書き出します。慎重に作業を進めたつもりですが、図形と図形の間に少しの隙間ができているものがありました。これでは<問題>ではなく<解答>です。もっと質のよい<問題>にするために、お絵描きソフト(Windowsのペイント)を使って、隙間を埋めることにしました。地道な作業でしたが、M君の喜んでくれる(であろう)顔を思い浮かべながら頑張りました。
最後は、これらのpngファイルをWord文書に挿入して、適当な大きさに縮小し、並べれば出来上がりです。【図7】
M君は喜んでくれたようですが、どこまで解けたかはまだわかりません。コツをつかめば、彼なら全部解いてくれると思います。
楽しかった!
デザイナーの福田さん、グッデイのお姉さん、そして広島のM君に感謝です。